
農地転用後の地目変更が遅れると危険!適切なタイミングとは?
松山市で不動産活用・許認可を専門とする村上行政書士事務所です。 ご所有の農地を宅地や駐車場などに活用したいと考えた際、まず必要となるのが「農地転用」です。
しかし、この農地転用が終わった後にすべき「地目変更」のタイミングを誤ると、後々大きな問題に発展する可能性があります。
「いつ地目変更すればいいの?」「手続きを忘れてたけど大丈夫?」といった疑問をお持ちの農地所有者の方へ。
この記事では、農地転用後の地目変更を適切なタイミングで行うための基準と、手続きを怠った際のリスク、そして安全かつスムーズに手続きを完了させる方法を、行政書士かつ宅地建物取引士の専門家がわかりやすく解説します。
農地転用と地目変更の基礎知識
農地転用とは?知っておきたい土地の区分と許可基準
「農地転用」とは、農地(田、畑など)を農地以外の目的(宅地、駐車場、資材置き場など)に利用することを目的に、土地の形質を変更することや建物を建設することを指します。
日本の土地は、農地法により厳しく守られており、農地を農地以外の用途に転用する場合は、原則として農地法に基づく都道府県知事等(農業委員会を経由)の許可が必要です(市街化区域内の農地は届出制)

💡 知っておきたい土地の区分と許可基準
農地転用では、その土地が「どの区分」に該当するかで許可の難易度が変わります。
- 市街化区域内農地: 比較的転用しやすい。届出制。
- 市街化調整区域内農地: 転用が原則として難しい。農地の優良性などに基づき、厳格に審査される(許可制)。
地目変更とは何か?地目と登記簿の現況確認ポイント
「地目」とは、土地の主な用途を示す法的な区分であり、登記簿謄本に記載されています。
例:田、畑(農地)のほか、宅地、公衆用道路、雑種地、山林など全部で23種類があります。
「地目変更」とは、土地の現況や用途が変化した際に、登記簿に記載されている地目を現況に合わせるための手続き(登記)のことです。
土地の現況が変更した場合、1ヶ月以内に地目変更の登記を申請する義務が、不動産登記法により定められています。
農地転用と地目変更の関係性を解説
農地転用と地目変更は、土地の用途を変えるという点で深く関係していますが、その目的と管轄が異なります。
項目 | 農地転用 | 地目変更 |
目的 | 農地の用途を非農地へ変更する許可を得る | 土地の現況と登記簿の記載を合致させる |
管轄 | 農業委員会、都道府県知事等(農地法) | 法務局(不動産登記法) |
義務 | 許可(または届出)が必要 | 現況変更後、1ヶ月以内の登記義務 |
農地を宅地として利用するためには、以下の流れになります。
- まず農地転用の許可(または届出)を得る。
- 実際に工事を行う
- 現況が宅地になった後
- 地目変更登記を行う
農地転用後に地目変更しないリスクと注意点
「農地転用許可は取ったから大丈夫だろう」と地目変更を怠ると、さまざまなリスクが発生します。
地目変更していない場合に発生する問題点
地目変更をしていない土地は、登記簿上の地目と現況が異なる「不一致」の状態になります。
- 登記義務違反: 不動産登記法上の1ヶ月以内の地目変更登記義務に違反することになります。
- 売却・担保設定の障害: 地目が農地のままだと、買主や金融機関が「農地」としてしか評価できません。買主は住宅ローンを組みにくく、売買契約の大きな障害になります。宅建士の視点からも、円滑な取引のためには事前の地目変更が必須です。
- 不動産の価値低下: 宅地として利用していても、登記上は農地のままだと、適正な価格で評価されず、結果として資産価値が低く見られがちです。
固定資産税や課税区分への影響と税金対策
固定資産税は、賦課期日(毎年1月1日)時点の土地の現況に基づいて決定されます。
- 地目が「農地」のままの場合: 現況が宅地でも、行政が「農地」と認定して課税しているケースと、現況に合わせて「宅地」として課税しているケースがあります。
- 「農地」のままの課税の危険性:
- 税金優遇の喪失リスク: 宅地として活用しているにもかかわらず、登記上・課税上も「農地」のままの場合、将来的に税務署から遡及課税されるリスクがあります。
- 不適切な課税: 農地には一般的に低い税率が適用されますが、現況が宅地と判断された場合、地目が未変更でも宅地並みの課税となることがあり、適切な税金対策が困難になります。
節税対策として地目変更を遅らせることはリスクを伴うため、現況に合わせて速やかに地目変更登記を行うことが、長期的な視点で最も安全です。
法的な制限や違反リスク・農地法・所有権移転との関係
地目が農地のままでは、その土地を売買や贈与する際にも大きな制約が生じます。
- 所有権移転の制限: 地目が農地のまま、農地転用の許可なしに所有権を移転する(売買・贈与など)ことは農地法違反となります。
- 融資(住宅ローン等)の弊害: 住宅ローンなど、融資を受ける際には土地を担保に入れるのが一般的ですが、地目が農地のままだと、金融機関が土地を正しく評価できず、融資が実行されないことがあります。
- 農地法違反リスク: 転用許可を得た後でも、現況が非農地になったにもかかわらず地目変更を怠ると、将来的に用途を再確認される際などに、農地法の運用面で疑義が生じる可能性があります。
農地転用後の地目変更が必要なタイミングと目安
地目変更のタイミングは、「農地転用が完了し、土地の現況が非農地になったとき」です。
地目変更のタイミング基準と許可の流れ
地目変更登記のタイミングは、「現況主義」に基づきます。
- 農地転用許可・届出: まず農業委員会等から転用の許可を得ます。
- 工事の完了: 宅地造成や建物建設など、転用目的に沿った工事が完了し、土地の現況が完全に変わった時点。
- 地目変更登記: 土地の現況が変わった日から1ヶ月以内に、法務局へ申請します。
住宅・事務所など建物完成時・建築時の対応
建物を建築する場合、地目変更の適切なタイミングは「建物が完成したとき」です。
- 建物完成前の注意点: 基礎工事が完了した時点では、まだ地目は農地のままです。登記簿上の地目を宅地に変更できるのは、住宅や事務所として利用できる状態(現況が宅地)になった時点です。
- 建物表題登記との連携: 新築の建物が完成すると、「建物表題登記」と「土地の地目変更登記」の2つを行うのが一般的です。これらを同時に、または近接した時期に行うことで、手続きの重複や漏れを防げます。
畑から宅地・雑種地への変更タイミングと期間
- 畑から宅地への変更: 建築工事が完了し、建物が利用できる状態になった時。
- 畑から雑種地(駐車場など)への変更: 舗装工事や区画線引きなど、駐車場としての利用に必要な造成工事がすべて完了し、利用が開始できる状態になった時。
どちらの場合も、現況が変更した日から1ヶ月以内に地目変更登記の申請が必要です。
ケース別に見るタイミングの違い・例外対応
転用目的 | 適切な地目変更のタイミング |
新築住宅 | 建物が完成し、居住できる状態になったとき(原則、建物表題登記と同時期) |
駐車場 | 舗装工事や区画線引きなど、造成工事が完了し、駐車場として利用できる状態になったとき |
資材置き場 | 造成や囲い設置など、資材置き場としての利用に必要な施設が整ったとき |
例外対応: 市街化区域内で届出により転用した場合でも、現況変更後の地目変更義務は同じです。地域ごとの農業委員会の運用ルールや、建物の完成時期によって、完了報告書提出のタイミングと連携させることもあります。
地目変更手続きの流れと必要書類
地目変更登記は、土地家屋調査士の専門領域ですが、全体の流れを行政書士が把握し、他資格者との連携をスムーズに行うことが、お客様にとってのメリットとなります。
地目変更登記の手続き手順を解説
- 農地転用完了: 転用工事が完了し、土地の現況が非農地(宅地・雑種地など)となる。
- 書類準備・調査: 申請に必要な書類を収集し、土地家屋調査士が現地を調査。
- 地目変更登記の申請: 土地所有者が、法務局に地目変更登記を申請する。
- 法務局の審査: 登記官が書類と現地の確認を行う。
- 登記完了: 登記簿の地目が新しい地目に変更され、完了。
申請に必要な書類と準備物
地目変更登記に必要な主な書類は以下の通りです。
- 地目変更登記申請書
- 登記原因証明情報(農地転用許可証や届出書の写し、工事完了引渡証明書など)
- 農地転用許可証の写し(または届出受理通知書)
- 申請人の印鑑証明書(代理人申請の場合)
- 地目変更図面(土地家屋調査士が作成。法務局の指定がある場合)
申請先・届出の方法と市街化区域・調整区域の違い
- 申請先: 土地の所在地を管轄する法務局です。
- 届出の方法: 土地所有者自身、または土地家屋調査士に依頼して代理申請します。
- 区域の違い: 市街化区域、調整区域に関わらず、地目変更登記の申請先は法務局です。ただし、農地転用許可証(調整区域)と届出受理通知書(市街化区域)という、登記原因証明情報として提出する書類が異なります。
期間の目安と登記完了までの週間スケジュール
通常、地目変更登記の申請から完了までの期間は、約1週間から10日程度が目安です(法務局の混雑状況や現地調査の有無により変動します)。
- 書類準備(土地家屋調査士依頼の場合): 1週間~2週間
- 法務局へ申請・審査: 1週間程度
- 合計: 2週間~3週間
現況変更後1ヶ月以内の申請義務があるため、工事が完了する時期を見越して、早めに専門家へ相談・依頼することが重要です。
地目変更の費用相場と節約ポイント
地目変更登記には、登録免許税はかかりませんが、専門家に依頼する場合の報酬が発生します。
登記費用や書類作成・無料相談の活用法
地目変更の費用は、主に土地家屋調査士への報酬例です。
費用項目 | 概要 | 費用の目安 |
土地家屋調査士報酬 | 申請書類作成、法務局への調査・申請代行費用 | 5万円~10万円程度(※地域や土地の状況による) |
実費 | 登記事項証明書、公図取得費用など | 数千円程度 |
調査士の先生によって、費用は変動するので、お見積もりを取ることをおすすめします。当事務所からご紹介させていただくことも可能です。
- 複数の専門家への依頼の一括化: 農地転用(行政書士)と地目変更(土地家屋調査士)の手続きを、連携している専門家グループに一括で依頼することで、費用交渉や手続きの手間を省ける場合があります。
自分で手続きする場合と専門家(土地家屋調査士等)依頼の違い
項目 | 自分で手続き(本人申請) | 専門家(土地家屋調査士)に依頼 |
費用 | 報酬がかからないため安価 | 報酬がかかる |
手間・時間 | 膨大な時間と労力、専門知識が必要 | 手続きをすべて代行してもらえるため楽 |
正確性・確実性 | 書類不備や登記遅延のリスクあり | 確実に登記を完了させられる |
地目変更登記は、土地の測量や図面作成など、高度な専門知識が必要です。特に農地転用が関わる複雑なケースでは、土地家屋調査士に依頼することを強く推奨します。
価格・請求の具体例と価格比較
例えば、農地転用後の宅地への地目変更(土地一筆)の場合、専門家への報酬は上記のように5万円~10万円が相場です。これは、複雑な分筆や測量を伴う「地積更正登記」などに比べて安価な部類に入ります。
費用対効果を考えると、登記を怠ったことによる固定資産税の遡及課税リスクや、売買が破談になるリスクの方が遥かに高いため、適正な費用で確実な手続きを専門家に依頼する方が賢明な判断と言えます。
農地転用・地目変更時の注意点と対策
物件売却や住宅ローン活用時の注意
宅地建物取引士の視点から特に強調したいのが、売却時とローン活用時の注意点です。
- 売却時の契約不適合リスク: 地目が農地のまま売却してしまうと、「現況と登記簿の不一致」として契約不適合責任(瑕疵)を問われる可能性があります。売買前に地目変更を完了させることが必須です。
- 住宅ローン活用: 金融機関は土地の現況を確認し、担保評価を行います。地目が農地のままでは評価が低く、希望通りの融資を受けられないか、融資自体が不可能になることがあります。
対策: 売却活動や融資申請の数ヶ月前には、地目変更登記を完了させておくべきです。
相続や所有者変更を伴う場合の手続きとポイント
相続した農地を活用する場合、相続登記と農地転用、地目変更の手続きが複雑に絡み合います。
- 相続登記(所有権移転): まず相続人に名義変更を行います(司法書士の業務)
- 農地転用: 新しい所有者の名義で転用許可申請を行います(行政書士の業務)
- 地目変更: 転用工事完了後、地目変更登記を行います(土地家屋調査士の業務)
ポイント: 相続人が複数いる場合、全員の合意や必要書類が多くなるため、手続きを並行して、かつ漏れなく行うことが重要です。
市街化区域・調整区域・地域ごとの基準と対応
- 市街化調整区域: 原則、農地転用は厳しく制限されます。許可を得るには、都市計画法に基づく開発許可など、農地法以外の法的なハードルもクリアする必要があります。
- 市街化区域: 届出制ですが、地域独自の用途規制や条例が存在する場合があります。
対策: 松山市のように地域ごとの行政に詳しい地元の行政書士に相談することが、地域特有の基準や手続きをクリアする近道です。
専門家選び・代行サービスの選び方と活用法
農地転用・地目変更には、以下の3つの専門家の連携が必要です。
専門家 | 業務範囲 |
行政書士 | 農地転用許可・届出申請、開発許可申請など許認可手続き |
土地家屋調査士 | 土地の測量、地目変更登記、建物表題登記など表示に関する登記 |
司法書士 | 不動産の売買・相続・贈与などによる権利に関する登記 |

村上行政書士事務所は、農地転用という許認可から、宅地建物取引士の知見を活かした売却・活用を見据えたサポート、そして連携する土地家屋調査士・司法書士とのスムーズな協業体制により、ワンストップで最適なサービスを提供可能です。
まとめ|安全に農地転用・地目変更するための基準と対策
農地を賢く活用し、その価値を最大限に引き出すためには、「農地転用」と「地目変更」を適切なタイミングで、正確に行うことが不可欠です。
地目変更を遅らせることは、登記義務違反、固定資産税の遡及課税リスク、そして何よりも不動産売買・融資の障害という、大きなリスクを伴います。
安全かつスムーズに手続きを完了させるための基準は、「農地転用工事完了後、現況が非農地となった日から1ヶ月以内」に地目変更登記を申請することです。
松山市で農地の活用や不動産売買をお考えの方は、農地転用から地目変更後の売却まで、トータルでサポートが可能な行政書士・宅地建物取引士の資格を持つ村上行政書士事務所にご相談ください。複雑な手続きを代行し、お客様の大切な資産を守るお手伝いをいたします。
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