松山市の持ち主不明・相続人のいない空き家どうする?

松山市にお住まいの皆さま、こんにちは。

空き家専門行政書士の村上です。

「親族が亡くなり、空き家が残されたけれど、相続人が誰もいない、あるいは連絡がつかない」 「もう何年も誰も住んでいない、近所のあの持ち主不明の空き家、このままで大丈夫?」 「遠方に住む親の家、将来的に引き継ぐ人がいなくなる可能性を考えると不安だ…」

このような不安を感じている方は、決して少なくありません。特に松山市内でも、少子高齢化や核家族化が進む中で、「持ち主不明の空き家」または、相続人がいない空き家の問題は深刻化しています。

持ち主不明・相続人がいない空き家は、放置すると固定資産税の負担が続き、防犯・防災・衛生面でのリスクが高まります。最悪の場合「特定空き家」に指定される可能性もあります。

今回は、そんな「持ち主不明・相続人がいない空き家」にどう対応すればよいのか、その具体的な対策と、重要な制度である「相続財産管理人制度」について、松山市の状況も踏まえながら、分かりやすく徹底解説します。


「持ち主不明の空き家」はなぜ生まれる?2つの主要パターン

まず、「持ち主不明の空き家」または「相続人がいない空き家」とはどのような状況を指すのでしょうか?大きく分けて次の2つのパターンがあります。


パターン①:法定相続人が存在しないケース

亡くなった方(被相続人)に、法律で定められた相続人(法定相続人)が誰もいない場合です。

日本の民法では、以下のように相続人の範囲が定められています。

  1. 配偶者:常に相続人となります。
  2. :第一順位の相続人です。子がいない場合は、次の順位へ。
  3. 直系尊属(父母、祖父母など):第二順位の相続人です。子がおらず、直系尊属がいる場合。
  4. 兄弟姉妹:第三順位の相続人です。子、直系尊属のいずれもいない場合。

これらの法定相続人が誰一人として存在しない場合、その方の財産は「相続人がいない」状態、つまり「持ち主不明」となります。


パターン②:法定相続人全員が相続放棄しているケース

法定相続人は存在するものの、全員が相続放棄をした結果、最終的に相続する者が誰もいなくなった場合も、「相続人がいない空き家」、実質的には「持ち主不明」の空き家として扱われます。

相続放棄は、亡くなった方に借金などの負債がある場合に、その負債を引き継がないために行われることが多い手続きです。

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「持ち主不明の空き家」は誰が管理する?【相続財産管理人制度が解決策】

相続人がいない、つまり持ち主が不明な空き家は、宙に浮いた状態となり、誰も管理する人がいなくなってしまいます。この問題を解決するために設けられているのが、相続財産管理人制度です。


相続財産管理人とは?その役割と責任

相続財産管理人とは、家庭裁判所によって選任され、相続人が明らかでない場合に、被相続人の財産を管理・清算し、最終的に残った財産を国庫に帰属させる役割を担う人のことです。

主な仕事内容は以下の通りです。

  • 財産調査と管理: 空き家の状態確認、固定資産税の支払い状況の把握など。
  • 債務の清算: 亡くなった方の借金や未払いの税金(固定資産税など)があれば、それらを清算します。松山市で未払いの固定資産税がある場合、市が申し立てを行うケースもあります。
  • 空き家の売却や利活用: 清算の一環として、空き家を売却し、換価(お金に換えること)することもできます。
  • 残余財産の国庫帰属: 全ての清算が終わった後、残った財産があれば国に引き渡します。

誰が相続財産管理人の選任を申し立てられる?

相続財産管理人の選任は、家庭裁判所に対し、「利害関係者」または「検察官」が申し立てることができます。

利害関係者とは、亡くなった方に債権がある人(例:未払い金を請求したい業者、賃貸物件の大家など)、特別縁故者(例:長年介護をしてきた人)などが該当します。また、松山市が未払い固定資産税の債権者として、申立を行うことも可能です。


申立人の負担と予納金について

相続財産管理人の選任を申し立てる際には、通常、予納金という費用を裁判所に納める必要があります。この予納金は、相続財産管理人の報酬や、財産調査・管理にかかる費用に充てられます。

予納金は、おおよそ100万円程度が目安とされていますが、事案の複雑さによって変動します。申立人が一度立て替える形になりますが、清算後の財産から充当されることもあります。


「持ち主不明の空き家」を地域資産へ【理想的な利活用】

相続人がいない、いわゆる「持ち主不明」の空き家でも、単に解体・処分するだけでなく、地域のために有効活用できる可能性があります。特に、購入希望者(空き家の受け手)がいる場合は、理想的なシナリオを描くことができます。


空き家利活用に向けた流れ(理想シナリオ)

  1. 「持ち主不明の空き家」が発覚: まずは空き家の状況を把握し、本当に相続人がいないかを確認します。
  2. 空き家の購入希望者が現れる: 地域活性化を目指す若者や、サテライトオフィス誘致などで空き家を探している事業者が現れるケースです。この段階で、入希望者からの「空家利活用」への意向や売買契約の確約を得ておくことが重要です。
  3. 相続財産管理人選任の申し立て: 利害関係者(例:松山市)または購入希望者が申し立てを行います。この際、利活用目的での売却シナリオを裁判所に提示することで、手続きがスムーズに進む可能性があります。
  4. 相続財産管理人選任: 弁護士や司法書士が選任されることが多いですが、特定の資格に限定されているわけではありません。事前に管理人候補と打ち合わせを行い、空き家の売却価格の設定などについて協議を進めることも有効です。
  5. 相続財産管理人による財産清算: 管理人が、亡くなった方の財産を調査し、債務(税金など)を清算します。
  6. 空き家の売却: 購入希望者と管理者との間で売買契約を締結し、購入者に登記を移転します。
  7. 空き家利活用へ: 無事に空き家が引き渡され、新しい所有者の手で有効活用が始まります。

このように、「空き家の受け手」が事前に見つかっていことで、スムーズな清算と利活用が可能になります。


【長野県の成功事例から学ぶ】行政と連携した空き家解消

長野県では、相続人がいない空き家を、行政が主体となって相続財産管理人制度を利用し、地域課題の解決につなげた素晴らしい事例があります。

  1. 辰野町(2017年~2019年)の事例: 10年以上空き家で、防犯・防災上の危険性があった物件が、町の「ほたる祭り」の歩行者天国区域にあったため、町が駐車場の活用を検討。加えて、古民家改修で宿泊業を営む若者が活用に名乗り出ていました。 町は税金滞納を理由に相続財産管理人選任を申し立て、約100万円の予納金を納付。特定空き家認定、行政代執行による解体・撤去を経て、最終的に代物弁済契約で土地の所有権を町に移転し、課題解決と利活用につなげました。
  2. 佐久穂町(2016年~2019年)の事例: こちらも税金滞納を理由に町が相続財産管理人選任を申し立て、約100万円の予納金を納付。相続人捜索の公告期間を経て、空き家が売却され、購入者への登記移転が完了しました。

出典:https://www.city.nakano.nagano.jp/docs/2017102700019/file_contents/202083_2.pdf

これらの事例からわかるように、「空き家の利活用」という具体的なシナリオがある場合は、相続財産管理人制度が有効に機能し、地域の課題解決につながっています。


放置するとどうなる?「持ち主不明の空き家」のリスクと特定空き家

一方で、空き家の利活用が難しい、あるいは危険性が非常に高い場合は、別の対応が必要になります。


放置された「持ち主不明の空き家」のリスク

「持ち主不明の空き家」をそのままにしておくと、次のような深刻な問題が発生する可能性があります。

  • ご近所トラブル: 雑草が生い茂る、不法投棄される、不審者が侵入するなど、近隣住民の方にご迷惑をかけてしまう。
  • 固定資産税の支払い: 空き家が存在する限り、毎年固定資産税がかかり続けます。誰かが負担しなければなりません。
  • 老朽化の加速: 適切な管理がされないと、建物の劣化が進み、倒壊の危険性も出てきます。松山市でも、地震や台風の際に空き家の倒壊が懸念される地域もあります。
  • 「特定空き家」に指定される可能性: 適切な管理がされない空き家は、行政から「特定空き家」に指定されることがあります。この場合、さらに厳しい指導や命令、最終的には行政代執行による解体費用が請求される可能性もあります。

特定空き家と行政代執行の流れ

空き家が著しく倒壊の危険性がある、衛生上有害となる、景観を著しく損なっているなどの状態になると、「特定空き家」に指定される可能性があります。

この場合、行政(松山市)から所有者(相続人がいない場合は相続財産管理人)に対して、改善の助言・指導、勧告、命令が行われます。

もし改善されない場合、最終的には行政が強制的に解体する行政代執行が行われることもあります。この際の解体費用は、本来の所有者(あるいは相続財産管理人)に請求されます。

実際の事例
行政代執行による危険な空き家の解体が完了しました
行政代執行による危険な空き家の解体が完了しました

行政代執行後の課題と検討点

  • 代執行費用の回収: 行政代執行で空き家が解体された場合、その費用を行政が負担することになります。相続財産管理人制度を利用して、残された土地を売却するなどして費用を回収するシナリオも検討されますが、売却が困難な場合は回収が難しくなることもあります。
  • 略式代執行の可能性: 非常に緊急性が高い場合は、特定空き家認定などの手続きを簡略化して行政代執行が行われるケースもありますが、基本的には法に基づいた手続きが必要です。

松山市の「持ち主不明・相続人のいない空き家」対策:行政書士にご相談を

相続人がいない、つまり「持ち主不明」の空き家問題は、非常に複雑で専門的な知識が求められます。特に、利活用を希望される方が現れた場合や、危険度の高い特定空き家として処理する必要がある場合など、状況に応じた対応が不可欠です。

私たち村上行政書士は、相続財産管理人制度の申し立てサポートはもちろん、以下のようなお手伝いが可能です。

  • 相続関係の調査:本当に相続人がいないのかを綿密に調査します。
  • 空き家の現状把握と評価:空き家の状態を確認し、売却や活用の可能性を探ります。
  • 自治体との連携サポート:松山市の空き家対策担当課との連携をサポートし、補助金や助成金の情報提供も行います。
  • 「空き家の受け手」とのマッチング支援:サテライトオフィス誘致などを通じた利活用希望者の紹介も検討しています。
  • 予納金や解体費用などの費用概算:事前に必要な費用の計算を行い、見通しを明確にします。
  • 将来の相続に向けたアドバイス:まだ相続が発生していない空き家についても、将来的に相続人がいなくなるリスクを回避するための生前対策についてアドバイスします。

持ち主不明・相続人がいない空き家は、「負の遺産」になりかねません。しかし、適切な手続きを踏むことで、地域の財産として有効活用したり、地域の安全を確保したりすることも可能です。

一人で抱え込まず、まずは一度、専門家である私たち行政書士にご相談ください。 あなたの空き家問題を、一緒に解決していきましょう。

ご連絡お待ちしております
空き家の情報収集をしたい方へ

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