
空き家は電気を止めるべき?ブレーカー管理で安心対策

「誰も住んでいない空き家なのに、なぜか電気代がかかっている…」
「空き家で火事が起きるって聞くけど、電気も関係あるの?」
もし、あなたがこのようなお悩みを抱えているなら、この記事はきっとお役に立ちます。松山市で空き家を専門に行政書士をしています。村上行政書士事務所の村上です。多くの空き家所有者の方からご相談を受ける中で、電気管理の重要性を痛感しています。
空き家の電気管理は、単に電気代を節約するためだけではありません。火災や漏電といったリスクから大切な資産を守り、近隣住民へのご迷惑を防ぐためにも非常に重要なのです。しかし、「何をどうすればいいのか分からない」と戸惑う方も少なくありません。
この記事では、空き家の電気管理について、ブレーカーの適切な使い方から長期不在時の対策、さらには電気代の節約術や専門業者への依頼ポイントまで、分かりやすく解説します。これを読めば、あなたの空き家管理への不安が解消され、安心して適切な対策が取れるようになるでしょう。
空き家の電気管理が必要な理由
空き家だからといって、電気管理を怠ってはいけません。むしろ、人が住んでいないからこそ、より慎重な管理が求められます。
空き家における電気のリスクとは?
空き家は、住人がいないため日常的な点検が行き届きにくく、電気に関するリスクが見過ごされがちです。
- 火災のリスク: 長期間放置された電気配線や劣化した家電製品は、漏電やショートを引き起こし、火災の原因となる可能性があります。特に、古い空き家では配線が旧式であることも多く、よりリスクが高まります。
- 漏電のリスク: 湿気や結露、小動物による配線の損傷などにより漏電が発生すると、建物の構造材を劣化させたり、近隣への影響が出たりする可能性があります。
- 無駄な電気代: 誰も使っていないのに、換気扇や照明がつけっぱなしになっていたり、待機電力が消費されていたりすることがあります。これは、無駄な出費につながります。
火災や漏電の危険性を考える
空き家における火災や漏電は、想像以上に深刻な事態を招く可能性があります。
- 近隣への延焼: 万が一空き家で火災が発生した場合、近隣の住宅に延焼し、甚大な被害をもたらす可能性があります。その場合、損害賠償問題に発展することも考えられます。
- 賠償責任: 空き家が原因で近隣に損害を与えた場合、所有者として賠償責任を負う可能性があります。適切な管理を怠っていたと判断されると、さらに厳しい責任を問われることもあります。→見逃せない!空き家の損害賠償リスクと実際の事例
- 建物の損壊: 火災や漏電は、建物の構造自体を大きく損壊させる恐れがあります。そうなると、修繕費用も高額になり、最悪の場合、取り壊しを余儀なくされることもあります。
空き家の維持管理における基本料金の影響
「電気を使っていないのに、なぜか毎月電気代がかかっている」と感じる方もいらっしゃるかもしれません。これは、電力会社との契約内容によって、使用量にかかわらず発生する「基本料金」が影響しているためです。
例えば、通常使用している電気契約のままでは、たとえ全く電気を使っていなくても基本料金が発生し続けます。使わない電気に毎月お金を払うのは、非常にもったいないですよね。
ブレーカーの役割と管理方法
空き家の電気管理において、ブレーカーは非常に重要な役割を担っています。適切に管理することで、リスクを軽減し、無駄な出費を抑えることができます。
ブレーカーの基本的な仕組み
ご家庭にあるブレーカーには、主に以下の3種類があります。
- アンペアブレーカー(サービスブレーカー): 電力会社との契約アンペア数に応じて設置され、家全体の電気使用量が契約アンペア数を超えると自動的に遮断されます。
- 漏電ブレーカー(ELB: Earth Leakage Breaker): 漏電を感知すると自動的に電気を遮断し、感電や火災を防ぎます。月に一度はテストボタンを押して作動確認をしましょう。
- 配線用遮断器(NFB: No Fuse Breaker): 各部屋や特定の回路に設置され、その回路で過電流が流れた際に電気を遮断します。
これらのブレーカーは、それぞれ異なる役割で電気の安全を守っています。
使わないブレーカーは切るべき理由
空き家で電気をほとんど使わない場合、アンペアブレーカーを「切る(OFFにする)」ことを強くおすすめします。
- 火災・漏電リスクの低減: 電気の供給を完全に止めることで、予期せぬ漏電やショートによる火災のリスクを大幅に減らすことができます。
- 無駄な電気代の削減: 基本料金が発生しない契約プランに切り替えるか、契約自体を一時的に休止することで、使っていない電気に対する費用を抑えることができます。電力会社によっては、長期不在向けのプランや、電気の使用を一時停止する手続きが用意されている場合があります。
- 防犯対策: 電気を通さないことで、不法侵入者が電気を使用するのを防ぐ効果も期待できます。
ただし、ブレーカーを切る際は後述の注意点を確認してください。
ブレーカーを落とす際の注意点
ブレーカーを落とす(切る)際には、いくつか注意すべき点があります。
- 冷蔵庫の電源: 冷蔵庫の中に食材が残っている場合は、ブレーカーを切る前に必ず中身を空にし、コンセントを抜いてください。電源を切ったまま放置すると、腐敗臭やカビの発生源となります。
- 防犯カメラ・照明: 防犯カメラやタイマー式照明など、防犯のために電気が必要な設備がある場合は、それらの電源は切らないように注意が必要です。その場合は、それらの設備を接続している回路のブレーカーだけを切らずに残すか、電気契約の一時停止ではなく、基本料金の低いプランへの変更を検討しましょう。
- 水道の凍結防止: 寒冷地では、水道管の凍結防止ヒーターに電気を使用している場合があります。ブレーカーを切ると凍結防止機能が停止し、水道管が破裂する恐れがあります。この場合は、冬季はブレーカーを切らない、または水抜きを徹底するなどの対策が必要です。→知らないと損する空き家の水道管トラブルとその解決法どうする?
- 契約アンペアの確認: 全てのブレーカーを落としても、電力会社との契約が生きていれば基本料金は発生し続けます。電気代を完全に止めるには、電力会社への連絡が必要です。
長期不在時の電気管理術
空き家を長期にわたって留守にする場合、適切な電気管理を行うことで、安心して不在期間を過ごせます。
電気の切り方と再開の方法
最も確実な電気の止め方は、電力会社に連絡して「電気の使用廃止(契約解除)」または「休止」の手続きを行うことです。
- 使用廃止(契約解除): 電気の使用を完全に停止し、メーターも撤去される場合があります。再度電気を使用する際には、新規契約が必要となり、電気工事が必要になることもあります。
- 休止: 一時的に電気の供給を停止し、再開する際に簡単な手続きで電気を使えるようにするものです。ただし、休止中でも基本料金が発生するプランもありますので、事前に確認が必要です。
再開する際は、電力会社に連絡して手続きを行えば、通常は数日以内に電気が開通します。
長期不在でも安心な対策
電力会社への連絡以外にも、長期不在時の安心対策として以下の方法があります。
- すべての家電製品のコンセントを抜く: 待機電力の消費を防ぐだけでなく、雷などによる瞬時的な過電流から家電を守る効果もあります。
- ブレーカーを落とす: 先述の注意点に留意しつつ、可能な範囲でブレーカーを落としましょう。
- 遠隔監視システムの導入: インターネット回線があれば、遠隔で電気の使用状況を監視できるシステムもあります。不審な電力消費があった場合に通知が来るように設定しておけば、異常を早期に察知できます。
- 定期的な巡回: 可能な場合は、月に一度など定期的に空き家を訪れ、異常がないか目視で確認することも重要です。遠方にお住いの方は空き家管理サービスの検討をしましょう。

必要な電気機器の管理方法
長期不在でも電源を入れておきたい機器がある場合は、慎重な管理が必要です。
- 防犯カメラ・センサーライト: 空き家のセキュリティを確保するために必要な場合は、その回路のブレーカーは切らずに残しましょう。ただし、落雷などによる故障のリスクも考慮し、過電圧保護機能付きのコンセントタップを使用するなどの対策も有効です。
- 換気扇: 湿気対策として24時間換気システムを稼働させている場合は、そのまま稼働させておく必要がないか確認しましょう。高気密住宅では、完全に締め切ると室内の空気がよどみ、カビや結露の原因になることもあります。
- 火災報知器: 電池式のものは定期的に電池残量を確認し、電源式のものはブレーカーを切ると作動しなくなるため注意が必要です。
空き家の電気代を節約する方法
空き家の電気代は、適切な管理を行うことで大幅に節約できます。
毎月の電気料金を抑える工夫
主な節約方法は、以下の通りです。
- 契約アンペア数の見直し: 空き家でほとんど電気を使わない場合、契約アンペア数を最低限に下げることで基本料金を抑えられます。
- 電力会社の変更: より基本料金の安い電力会社やプランに切り替えることで、電気代を削減できる可能性があります。複数の電力会社の料金プランを比較検討してみましょう。
- ブレーカーを落とす: 前述の通り、長期不在時にはブレーカーを落とすことで、待機電力の消費や基本料金の発生を防ぐことができます。
- 家電製品のコンセントを抜く: 使わない家電製品のコンセントは抜いておくことで、待機電力の消費をゼロにできます。
消費量をチェックする重要性
空き家の電気代が高いと感じる場合、まずは電気メーターの動きを定期的にチェックすることをおすすめします。誰もいないはずなのにメーターが回っているようであれば、どこかで電気が消費されている可能性があります。
- 電力会社からの請求書を確認: 毎月の電気使用量を確認し、異常に高い月がないかチェックしましょう。電力会社によっては、インターネットで電気使用量を確認できるサービスもあります。
- 現地でメーターを確認: 実際に空き家を訪れた際に、電気メーターが回っていないか確認しましょう。もし回っているようなら、どこかの家電製品の電源が入っていたり、漏電の可能性も考えられます。
古民家の電気管理とコスト削減
特に古い空き家や古民家の場合、電気設備の老朽化が進んでいることが多く、注意が必要です。
- 配線の劣化: 古い配線は絶縁体が劣化しており、漏電やショートのリスクが高まります。
- 古い家電製品: 昔ながらの家電製品が残されている場合、最新の省エネ家電に比べて消費電力が大きいことがあります。不要なものは処分するか、電力消費の少ないものに交換を検討しましょう。
- 専門家による点検: 不安な場合は、電気工事士などの専門家に依頼して、電気設備の点検を受けることを強くおすすめします。老朽化した配線の交換や、安全装置の設置など、適切なアドバイスをもらえます。
空き家の電気工事と維持のポイント
空き家の電気管理は、所有者自身で行うには限界があります。専門業者への依頼や定期的な点検が安心につながります。
専門業者への依頼と点検の重要性
- 電気工事士: 漏電調査や配線の修理・交換、ブレーカーの設置・交換などは、電気工事士の資格を持つ専門業者でなければ行うことができません。
- 点検の重要性: 老朽化による配線の劣化や、動物による損傷など、目に見えない部分に問題が潜んでいる可能性があります。定期的な点検によって、これらの問題を早期に発見し、大きなトラブルを未然に防ぐことができます。
- 見積もりの取得: 複数の業者から見積もりを取り、料金だけでなく、対応内容や実績も比較検討しましょう。
定期的なチェックのすすめ
専門業者に依頼する以外にも、所有者自身でできる定期的なチェックがあります。
- ブレーカーの作動確認: 月に一度、漏電ブレーカーのテストボタンを押して、正常に作動するか確認しましょう。
- 異臭・異音の確認: 空き家を訪れた際に、焦げ臭いにおいや、電気系統からの異常な音がないか注意して確認しましょう。
- 家電製品・コンセントの状態: 長期間放置された家電製品やコンセントに、ホコリがたまっていたり、変色している部分がないか確認しましょう。
電力会社との契約見直しのタイミング
以下のようなタイミングで、電力会社との契約見直しを検討しましょう。
- 空き家になった時: 新たに空き家になった場合は、すぐに電力会社に連絡し、電気契約の見直しや一時停止の手続きを行いましょう。
- 電気使用量が極端に少ない時: 長期間空き家で、電気の使用量がほとんどない場合は、契約プランの変更や、電力会社自体の切り替えを検討しましょう。
- 建物の解体や売却を検討する時: 解体や売却が決まった場合は、そのタイミングで電気契約を完全に解除する必要があります。
火災や漏電を防ぐための具体策
空き家の電気管理で最も重要なのは、火災や漏電といったリスクを未然に防ぐことです。
配線確認と修理の流れ
- 目視確認: まずは、露出している配線に被覆の破れや劣化がないか、目視で確認しましょう。ネズミなどの小動物がかじった痕跡がないかも注意深く見ます。
- 専門家による調査: 不安な場合は、電気工事士に依頼して、隠れた配線の状態や絶縁状態を調査してもらいましょう。特に築年数の古い空き家では、配線全体の交換が必要となるケースもあります。
- 修理・交換: 劣化や損傷が見つかった場合は、速やかに専門業者に修理や交換を依頼しましょう。費用がかかることですが、火災リスクを考えれば必要不可欠な投資です。
漏電ブレーカーのポイント
漏電ブレーカーは、漏電を感知して電気を遮断する非常に重要な安全装置です。
- 設置の確認: 空き家に漏電ブレーカーが設置されているか確認しましょう。古い建物では設置されていない場合もあります。
- 定期的なテスト: 月に一度、テストボタンを押して正常に作動するか確認しましょう。
- 作動時の対応: もし漏電ブレーカーが落ちた場合は、むやみに上げずに、全ての家電製品のコンセントを抜き、配線用遮断器を一つずつ上げてみて、どの回路で漏電しているか特定しましょう。特定できない場合や、頻繁に落ちる場合は、すぐに専門業者に連絡してください。
環境を整える換気や湿気対策
湿気は、電気配線の劣化を早めたり、漏電のリスクを高めたりする原因となります。
- 定期的な換気: 空き家を訪れた際には、窓を開けて十分に換気を行い、室内の空気を入れ替えましょう。
- 除湿対策: 除湿機を設置する、または除湿剤を置くなどの対策も有効です。ただし、除湿機を使用する場合は、コンセントを差しっぱなしにするため、かえってリスクになる可能性も考慮し、定期的な巡回が難しい場合は避けるのが賢明です。
- 水漏れのチェック: 雨漏りや配管からの水漏れがないか、定期的に確認しましょう。水漏れは、電気設備に深刻なダメージを与える可能性があります。
まとめ:空き家の電気管理は安心の第一歩
空き家の電気管理は、所有者にとって重要な責任であり、安心した空き家維持の第一歩となります。
管理方法の再確認
この記事で解説したポイントを再度ご確認ください。
- 電気のリスク理解: 火災や漏電、無駄な電気代のリスクを認識する。
- ブレーカーの活用: 長期不在時はブレーカーを切ることを検討し、漏電ブレーカーの定期的なテストを行う。
- 電力会社との連携: 契約の見直しや一時停止の手続きを検討する。
- 専門業者への依頼: 不安な点があれば電気工事士などの専門家に相談する。
- 定期的な巡回と確認: 異変がないか、所有者自身でも定期的に確認する。
ブレーカーを適切に扱う重要性
ブレーカーは、空き家を守るための「番人」のようなものです。適切に扱い、定期的に点検することで、電気トラブルを未然に防ぎ、大切な資産を守ることができます。
持続可能な電気の使い方の提案
空き家も、未来に引き継がれる大切な資産です。適切な電気管理を通じて、火災などのリスクを減らし、無駄なコストを削減することは、持続可能な空き家管理につながります。
もし、この記事を読んでもまだ不安が残る、個別のケースでどうすればいいか迷っている、といった場合は、ぜひお気軽にご相談ください。松山市で空き家専門の行政書士として、あなたの状況に合わせた最適なアドバイスをさせていただきます。